
栄養・運動・休養の中で「休養」だけが後回しに
「健康づくりの三要素」として掲げられた 「栄養・運動・休養」 の中で、最も早く重視されたのは「栄養」でした。その後、「運動」の重要性が強調され、第二次国民健康づくり対策では「アクティブ80ヘルスプラン」として、運動を推進する施策がとられました。
これらの取り組みにより、栄養と運動の重要性は国民の間に浸透しました。学校教育でも 体育の授業や家庭科の栄養指導が行われ、大学でも栄養学やスポーツ科学を専門的に学べる環境が整っています。
しかし、「休養」については長らく特別な対策がとられず、政策の優先順位としても後回しにされてきました。
「休養」が国の対策に加わったのは最近
「休養」が国の健康政策に本格的に組み込まれたのは 第三次国民健康づくり対策からです。そして第四次対策(2013年~2023年)では、ようやく休養に関する具体的な目標が2つ掲げられました。
1.睡眠不足の人の割合を減らす
2009年には18.4%いた「十分な睡眠が取れていない人」を、2022年度までに15%に減らすことを目標とした。
2.過労労働者の割合を減らす
2011年時点で 9.3% いた「週60時間以上働いている人」を、2020年までに5%まで減らすことを目標とした。
このように、「労働時間を減らし、睡眠時間を確保する」という方向性が明確になりました。しかし、実際にこの目標が達成されたかというと、必ずしも十分とは言えません。
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休養の重要性が浸透しない理由
国の健康政策において休養が後回しにされてきたことも影響していますが、そもそも日本社会全体で「休養」の価値が十分に認識されていないことが問題です。
1.「休む=怠けている」という価値観
・日本では「一生懸命働くこと」が美徳とされ、十分な休養を取ることに罪悪感を持つ人が多い。
・「有給休暇を取ると職場に迷惑がかかる」と考える文化が根強い。
2.学校教育で「休養」を学ぶ機会がない
・栄養や運動は授業で学ぶ機会があるが、「休養の正しい取り方」について学ぶ機会がほとんどない。
・休養の重要性を理解する教育が不足している。
3.企業の意識改革が遅れている
・近年「働き方改革」により労働時間の短縮が進められているが、 労働時間を減らしても、その分仕事の密度が増してしまい、かえって疲れが増している ケースもある。
・残業は減ったものの、仕事のプレッシャーやストレスが減ったわけではない。
休養への意識改革が必要
休養の重要性は 「知られていない」のではなく、「軽視されている」というのが現状かもしれません。社会全体が「休養=不要なもの」と考えている限り、どれだけ政策を打ち出しても、根本的な解決にはなりません。
今後は、「休むことも健康の一部」という意識を国民全体に浸透させることが求められます。
参考元:東洋経済新報社「あなたを疲れから救う 休養学」
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