好中球は、細菌感染や組織損傷が発生するといち早く侵襲部位に向かい、異物の貪食や感染の拡散防止を担います。この効率的な移動と集積のメカニズムは、細胞同士の信号伝達や組織構造の変化を伴う極めて巧妙な仕組みです。

最初に動き出す好中球
組織が傷害されると、近傍にいる少数の好中球が最初に細胞遊走因子(ケモカインや脂質因子など)を感知します。この刺激によって好中球は侵襲部位へ向かい、移動・集積します。侵襲部位では、細胞が破壊された際に放出されるシグナル(デンジャーシグナル)が発生します。これに応じて好中球は組織内を移動し、目的地にたどり着きます。
好中球による自己強化ループ~LTB4の役割~
最初に侵襲部位へ到達した好中球は、その場で異物を貪食しますが、やがて死を迎えながら新たな細胞遊走シグナルを放出します。これによってさらに多くの好中球が誘導されます。好中球が産生する脂質因子であるロイコトリエンB4(LTB4)は特に重要な役割を担います。LTB4は細胞遊走シグナルを強力に増幅し、周囲の好中球を迅速かつ広範囲から呼び寄せます。このプロセスにより好中球の浸潤が一気に加速します。
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コラーゲンネットワークの再構成と侵襲部位の形成
侵襲部位に集積した好中球は、コラーゲン線維ネットワークを再構成します。好中球の活動によってコラーゲンが分解され、侵襲部位にコラーゲンのない領域が形成されます。この領域は好中球の密集部位となり、感染や異物の除去活動が集中的に行われます。
マクロファージ・単球への移行~炎症の制御へ~
好中球の集積が進むと、組織内の再構築も次第に進行します。コラーゲン線維の再配置によって侵襲部位の辺縁部にマクロファージや単球が集積します。この時点で好中球による集積・浸潤は停止し、炎症の主体がマクロファージやリンパ球へ移行します。マクロファージは異物や破壊された細胞の除去だけでなく、炎症を抑制し、組織の修復を促進する重要な役割を担います。
まとめ~効率的な好中球浸潤の仕組み~
1.最初の好中球の集積:近隣の好中球が最初に侵襲部位へ到達し、細胞遊走シグナルを発生。
2.自己強化ループ:LTB4によるシグナル増幅がより多くの好中球を集める。
3.コラーゲン再構成と侵襲中心の形成:好中球はコラーゲンネットワークを再構築し、侵襲部位の中心部に密集。
4.マクロファージ・単球へのバトンタッチ:炎症主体がマクロファージへ移行し、収束フェーズへ。
このような精巧な制御機構によって、好中球は効率的に侵襲部位へ集まり、生体防御反応の中核を担うのです。
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